幸福になりたいのなら幸福になろうとしてはいけない / ラス・ハリス

「幸福」という言葉は皮肉に満ちている。
皮肉と言ったのは、人々が幸福を求めるだけではなくそれにしがみつこうとし、あらゆる不幸を遠ざけようと躍起になって泥沼にはまり込むからだ。
幸福といった感情を必死に絞り出そうとしている私たちは、実は幸福とは正反対の行動をしており、当然の結果としてひどい嫌悪感と無力感を味わう。

まえがき

そうなんだよな、幸福を強く欲すれば欲するほど、今幸福ではないと言う現実がのしかかってくるんだよな…。と言うせやな感が強い出だしで、全体的にすらっと読めました。

当然のことながら、「じゃあ幸福になりたいなら結局どうすればいいのよ?」と言う疑問に対して、「ACT療法が数々の実験で効いとるで!今から根拠を説明するわ!」と返してくる流れの本です。

以下メモ。

・前提
我々は、未だかつてない生活水準を保持し、医療・環境・公平性にも恵まれてるのに、なんでこんな本屋には鬱とか心の病気とかに関する本があふれかえってるの?自殺率も高いよね?
・幸福には2つの意味がある!

1つは「気分がいい」こと。感謝の気持ちを受け取る、美味しい食べ物を食べる、贅沢な旅行を満喫する。しかし、いつかは必ず、其の気分には終わりが来る。長期的に見れば、こちらを追い求め続けるのは、不幸の要因になり得る。

もう1つは、「豊かな、満ち足りた、意味ある人生」こと。人生を通して信じるものを明確化し、価値があると思うものに向かうとき、私たちは生命の力強い感覚を体験する。この本ではこちらを幸福としている。
・幸福の罠

私たちはみんな「ハッピーエンド」が大好きだ。試練を乗り越えた暁には、長く続くであろう幸福が待っている。
しかし、そのデザインに、果たして現実感はあるだろうか?これが、幸福と呼ばれる罠の設計図である。

神話1「幸福はすべて人類にとって自然な状態である」
 多くの人は、「本来幸福であるべき」はずなのに自分はそうではないと思いこみ、不幸に陥りがち。(幸福の人の方が稀だってことに気づけ!)

神話2「幸福でないのは、あなたに欠陥があるからだ」
 心が弱いとか行動ができないとか怠慢であるとか、そう言う理由で幸福になれない。(そう言うわけじゃない!)

神話3「よりよい人生を創造するために、ネガティブな感情を追い払わなくてはならない」
 いい気分・ポジティブなことが善であり、嫌な感情・ネガティブなことは悪である、と言う認識がそもそも問題。(人生で価値があるものは、両方ともに伴ってくる。ネガティブなことを避けようと思うばかりに、セットであるはずのポジティブまで避けていないか?)

神話4「自分の思考や感情をコントロールできなければならない」
 ポジティブな感情で前向きにいき、ネガティブな自分を追い払う。思考や感情をコントロールする本は世に溢れ、いかにもできそうなことに思えるが、そんなことはない。超難しい。(そんなものより、行動の方をコントロールしていこうぜ!こっちは割とコントロールできるから!)

この神話4つが基本的な「幸福の罠の設計図」である。
思考と感情をコントロールしよう(ポジティブに考えて生きよう!)とすることが、どれだけ大変なのかと言うのは、次の通り。

・多くの時間とエネルギーを使う割に、長期的な効果が薄い。
・追い払った感情や思考はすぐに戻ってくる。自分の不完全さを味わうことになる。
・短期的に不快感を封じ込める戦略は、長期的には生活の質を低下させる。

こうした望まない結果により、人はさらに不快感が生まれ、もっとコントロールしようと躍起になって悪循環になる。
以上に対して、コントロールすべきは行動であると言うのがACT療法の考え。(そうすると、自然と自分を悩ます力が弱まってくる)
ACT療法における「6つの基本行動原則」は以下の通り。

1.脱フュージョン
 思考による思い込みから離れる。

2.拡張
 ネガティブな考えや感情を消そうとするのではなく、そのための居場所を作ってやる。

3.接続
 今この瞬間を生きる。過去と未来を切り離す。

4.観察する自己
 何が自分に起っているのか、何を変化させるべきなのか、土台となる自分について分析する。

5.価値の確認
 人生を意味あるするものにするため、自分が価値観を置くものを明確にする。自分を動かす動機、その道を認識する。

6.目標に向かっての行動
 どんな行動でもよいわけではない。何度失敗しても、飽くことなく元の道に戻ろうとする行動が、人生に意味をもたらす。

1~4はマインドフルネスで実践できる。
1~4.マインドフルネス+5.価値+6.行動=心理的柔軟性を持とう。
その具体的なやり方はこうだ!

と言うのが大まかな流れ。具体的な説明や方法については本を読んでね!

個人的には、そこまで人生に意味を持たせることが(そして人生が豊かであればあるほどいいはずだと言うことが)本当に重要か?というような疑問を感じつつも、自己分析+自己内省+価値観の再認識+行動と言う取り組みは元々大事だとは思っていたので、マインドフルネスを続けられるようになってきた今ではタイムリーないい本だったなあと思います。ちょうど、國分先生の「暇と退屈の倫理学」を読んでいたあとだったので、色々考えられました。
近年は「幸福って神話みんな大好きだよね〜」って感じでボコボコにしてくる物が多くて、色々考えさせられます。