天才たちの日課 / メイソン・カリー

ハハーン、さてはこの日課を模倣すれば天才になれるな?

と思ったわけではないのだが、人の生活スケジュールを覗くのが好きな私にとって格好の餌食とも言えるタイトルだったので手に取ったかと思う。

私はここ1年半の間、平日はほぼ朝5時半に起き、歯を磨いてコーヒーをいれ、机の前に座って執筆を始めるということを繰り返してきた。書いていたのは、過去四百年間の偉人たちが、私がいまいったようなことに、どう対処してきたかということ──つまり、偉人たちは最高の仕事をするために、毎日どう時間をやりくりしていたのか、創造性を高め生産性をあげるために、どんなスケジュールを組んでいたのか、ということだ。彼らの日常のごく平凡な事柄──何時に寝て何時に食事し、いつ仕事をしていつ頭を悩ませていたか──を書くことによって、その性格や生涯について新たな視点を提供し、習慣の奴隷としての姿を、小さなおもしろい絵に描くのが目的といっていい。

天才たちの日課
クリエイティブな人々の必ずしもクリエイティブでない日々
まえがき

そんなわけで、説明書き曰く、古今東西の小説家、詩人、芸術家、哲学者、研究者、作曲家、映画監督など161人の天才たちのライフスケジュールを追った本。

原題は「DAILY RITUALS:how Artists Work」。筆者は、彼らの日々のルーティン(DAILY RITUALS)に注目したとのこと。

ルーティンには平凡、思考の欠如、惰性と言ったようなニュアンスもあるかと思うが、近年ではルーティンの権化みたいな人がガンガン活躍していたので(イチローとか)、やっぱマッチしたルーティンを日課に組み込むってすげえんだな!という結論。

規則正しい生活リズムとスケジュールで原稿を書き上げる作家もいれば、暴飲暴食・気分屋・散らかり放題で締め切りブッチぎり常連と言ったいかにも天才アーティストっぽい人もいて、最初のうちは笑ってたけど、途中からみんなパターン化してきたな感があった(なにせ161人なのでそうなる)。それも含めて楽しかった。

細切れの感想としては、

・やった!おしなべて散歩率高い!(狂的な散歩信者)

・モーツァルト思ったより忙しすぎない?

・逆にベートーベンはゆとりありすぎじゃない?

・午前中片付けて午後から散歩、夕方から友人と酒飲んで団欒みたいな優雅な人間がそこそこおる…。私もそうしたい…。

・仕事が生きがい!みたいな人もいれば、仕事は人生から逃避するのに最高!(皮肉)みたいな人ともいて、ページをめくるたびに真面目っぽい人とパンチの効いたやつの温度差に風邪ひきそうになる。

・規則正しいリズムと徹底した自己管理で創造リズムを保つんだよ!とか、1日30分以上創作できたことないけどその30分の閃きをずっと待ってる、1日30分でも1年積み重ねたらすげーじゃん?とか、その人なりの哲学があって痺れる。

・まさかの村上春樹登場、そしてコメントもむやみにかっこいいな。

個人的には、著名なスイスの心理学者・精神医学者のカール・ユング先生のスケジュールに憧れる。

小さな村の湖畔に簡素な家を建てて、ソローさながらの住環境の中、朝7時に起きる。午前中の2時間で仕事を終わらせ、残りは絵を描いたり瞑想に耽ったり、丘へ散歩へ行ったり、来客の対応や手紙の返事を書く。午後2・3時になるとお茶を飲み、夕方を楽しみながら料理をたくさん作る。夕食前に食前酒を飲むことが多く、それを「夕暮れの一杯」と呼んだ。
電気のない生活で、日が暮れると古いランプに火を入れ、水道はなく、井戸からポンプで水を汲む。「こういった単純な行為が、人間を単純にする。だが、単純であることが、いかに難しいか!」

朝起きて湖畔を散歩して、2時間で仕事を終わらせ、午後は気ままに好きなことをし、夕方になったら夕暮れを愛でる。最高じゃないですか。