その悩み、哲学者がすでに答えを出しています / 小林昌平

人間には色々悩みがあるけど、過去の哲学者たちが一定の答えを出しているものもあるんだよね!

というノリで、様々な悩みに対して、いろんなアプローチの仕方を教えてくれる本。ここでいう悩みとは、だいたい次の通り。

  • 将来、食べていけるか不安(→アリストテレス)
  • 他人から認められたい。チヤホヤされたい(→ジャック・ラカン)
  • 嫌いな上司がいる。上司とうまくいってない(→スピノザ)
  • 友人から下に見られている(→アドラー)
  • 人生が辛い(→ハイデカー)

他、計25のお悩みに対し、多様な哲学者の解釈で返してくれます。

個人的に、これは良かった!と思ったものをピックアップしていこうかと。

1.将来、食べていけるか不安(→アリストテレス)

どうすればこの不安を払拭することができるかといえば、「将来の目的や計画をいったん忘れ、今この瞬間のやりたいこと、やるべきことに熱中せよ」

・将来の目的を最優先にした行為:運動(キーネーシス)的思想 → 賢いが、今の自分を犠牲にする行為
・今この瞬間に集中する行為:現実活動隊(エネルゲイア)的思想 → 今、自分にとって楽しく充実しているという行為、それ自体が報酬であること

ここでは、エネルゲイア的な思想で頑張れ!ってことですね。つまり、「純粋にテニスに熱中して楽しんでいたら、いつの間にか全米オープンで優勝!」みたいなのが、高いパフォーマンスを叩き出す秘訣だよみたいな。

プロセス自体に熱中し、それ自体が報酬だから楽しくて、かつ後からいい結果がついてくるかもだぜ!的なやつですね。これ知ってる、天衣無縫の極みってやつでしょ。テニプリで見たことある。

「快楽は本来、『活動(エネルゲイア)』に他ならず、それ自身が目的なのである」

2.やりたいことがない。毎日が楽しくない(→道元)

これは私がいっときハマった悩みで、やることはあるのにやりたいことはないという、圧倒的退屈感…!これ知ってるぞ、Vampire : the Masqueradeで見た、永劫をいきるヴァンパイアが抱える業…!みたいなやつです(余裕あるやん)

毎日毎日やることが決まっていて、来る日も来る日も似たような時が流れ、私の生って一体なんなんだろう?楽しいことがない、生きている意味がわからない、という諦念、虚無感を感じてしまうというか。

これに対して僧である道元の考えを参考にすると、「そんな些事、凡事こそ、悟りに至るための修行」と言えるのではないか?と書かれています。

「これをやってあれをやってこれをやるのはこのためで…(生きるために生活のために金を稼ぐために会社に行くために朝起きて歯磨きをして仕事をして帰って寝るのは生きるためでまた生活のために…)」と、私たちが行う日常的行為には常に何かに繋がっており、終わりの見えない連続が永遠に繰り返されているように見える。常に何かの意味のために、何かの行為をし続けなければならない。そこに「私」というものが、刺激もなく、退屈し続けている。そして行為が途切れない限り、漠然とした不安も続いてゆく。(と思う)

この連続の鎖を断ち切るのが、座禅というただ座るだけの意味を持たないことに対して無心になる修行であるのだが、ある日、修行中の道元は気付くわけです。

老僧のお偉いさんが、せっせと椎茸を干している。そんな雑事は若い僧に任せればいいのでは?と問うも、「それでは意味がない」と返される。また、老僧は無心で干す作業に戻る。

…なるほど、禅だけが修行ではない。どのような些事でも、(退屈だと思う)自己を忘れるほどに、(ある意味アリストテレスの考えともマッチするが)行為そのものを(禅めいて)無心に行うことは可能だ。

つまり、生活すべてが禅である。

10年前の私が聞いたら、リアルでは役にたたなさそうな理想論ですなあ…と感じて即終わったような気もするが、今は「あー!なんとなくわかる!」って感じで読めて、その自分の変化を感じ取れることもあって、楽しかった。

楽しくない…と思いながら送っている日常の1つ1つに対して、マインドレスだから退屈に思う余地があるんだよ!惰性にフワフワにならず、マインドフルにやれや!(今この瞬間に熱中)ってやつかな。

3.夜、孤独を感じる。(→ショーペンハウアー)

孤独を感じたことがねえ……。(2人1組になれと言われた時以外は)
基本的には割と一人の方が気が楽なタイプで、誰とも会わなくても寂しいとは感じない方なのですが(どうでもいいときは一人になりてえ!!人とは分かり合える気がしねえ!他人からごちゃごちゃ言われたくねえ!!というのをこじらせている)、でも「幸福になりたければ人間関係を改善せよ!質の高い友人たちとの意義ある交わりこそが喜びである!」的なやつが昨今の流行だしなあ…とだいぶ腰が重い感じしてました。趣味がTRPGで本当に良かった。(自分だけじゃできないゲーム)

そんなモヤモヤに対して、ショーペンハウアー先生は「早くから孤独に馴染み、不幸を愛するところまできた人は、金鉱を手に入れたようなもの」という棍棒で殴りかかってくれます。

この先生もアリストテレス推しで、「幸福の基本は自分の外に何ものも期待せず、自分のうちにあるもので楽しむことである」「自分自身だけをあてにしてきた人間、自分にとって自分自身が一切合切でありうる人間が、最も幸せだと結論することができる」という、まず他人に求める前に、自分の素地を耕せして豊かになりや!!!!!自給自足!!!!!!!という結論でした。

私個人としては、まだそこまで自給自足でやっていく度胸はないんだけど(本を読むのは好きだし、ソローさながらの生活も送りとうない)、やっぱ人生友人と楽しまなきゃ損っていうもんなー!それはわかるよ!ってな賛歌にノーって言ってくれる人がいて心強えなと。


と言ったようないろんな悩みにいろんな先生が丁寧にジャブを打ち込んでくれる本。
途中、悪ィ!ここは解釈違いだわ!ってところもありましたが、全体的にスラスラ読めて面白かったです。